そこはかとなく、いじらしく。
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空想:くたびれた人のハッピーライフ

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いつか見た光景を、ふいに思い出した。


それがいつなのか、どういったものだったのか、それはわからない。

 

しかし、どことなく凪いだ海にそよぐ風のように、どこかしら心がさざめいている。

 

思い出そうと努めても手がかりがない。かといって放っておくのも心のやり場がない。

 

それは赤い犬のようだった。

 

夜更けにのそのそと徘徊する赤い犬。

 

どこへ向かっているのかはわからない。とにかく、犬は歩き続けている。

 

一度だけその犬を見たことがある。

 

寂寥をたたえた足取りで、誰からも愛されたことがなく、必要とされたこともない、ただ生まれたから死ぬまで生きている。そんな印象だった。

 

生きている価値など誰が決める?生きている意味など誰が知る?

 

人生に価値も意味も無い。あるのは願望だけだ。

 

だからこそ人は衝突し、憎み合い、争い、そして愛する。

 

赤い犬は、誰かを愛したことがあるのだろうか。

 

世の中は醜いが、それがすべて悪だというにはいささか愛おしい。

 

窓を開けると凛とした空気が肌を撫でた。私はなにを思い出したのだろう。赤い犬はいま、どこへいるのだろう。

 

わからない。

 

死ぬは易いが生きるのは難しい。それも生き続けるのは、至極難題だと思う。

 

だからこそ、生まれてしまった以上は、その難題に取り掛かり、よりよく生きていくことが必要だ。やれ社交だ、恋愛だ、酒だ、クスリだ、ギャンブルだ、あいつが気に入らない、自分を認めて欲しい、そういう欲望はよりよく生きるには邪魔だろう。

 

必要なものは、すべて己の頭の中にある。

 

幸福な人生とは、死ぬよりはマシだと思える程度の人生のことだ。

 

今日も私は、いつ死んでもいいように、コーヒーとクロワッサンをいただきます。ラフマニノフのピアノに身をあずけながら。

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